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京英 - 'Starting Over English' シリーズは「*高学年になっても基礎事項を習得していない学習者」(以下、「学習者」)向けに、現指導者が作成した授業プリントを元にして編集したものです。
「この生徒たちに、こんな集中力があるとは思わなかった」
「いつも課題に四苦八苦する生徒が『今回は完璧かも』と期限内に提出し、驚いた」
これらは、'S.O.E. Basic Drill' を実際にご利用になった、ある工業高校の先生のご感想です。では他書に例を見ない、本ドリルの4つの特徴を、順を追ってご説明申し上げます。
1. 十分にゆとりを持たせたユニット構成
「be動詞」を例にお示ししましょう。学習者の多くは、英語理解の中核を占める、動詞の基本的なルールを十分に、場合によってはほとんど理解していません。ところが通常の高校用教材は、基礎レベルのものですら「be動詞」を「現在形」と「過去形」という、大ざっぱな分類にて章立てするにとどまります。そのため学習者は、ここでもまた理解を深められないまま「be動詞」を終えることになります。
一方、'S.O.E. Basic Drill' は、このような現状を踏まえ、「be動詞」を、[現在形肯定文(主語単数)/現在形肯定文(主語複数)/現在形疑問文/現在形否定文/過去形肯定文(主語単数)/過去形肯定文(主語複数)/過去形疑問文/過去形否定文]の、計8ユニットに細かく章立てしました。そのため学習者の混乱は最小限に抑えられ、最後まで脱落せず演習することが可能です。
2. 感覚で理解させる文法ポイントのレイアウト
'S.O.E.'には言葉による文法の説明がありません。そもそも文法の指示説明を自分で読んで理解し、それで演習に臨めるのなら、今の学力低下の時代にあってこれはすでに「基礎」の範疇を超えているはずです。基礎、標準、入試レベルの区別なく、おしなべて詳細な解説に固執する教材(教科書含む)が多い中[*1]、本書はその一切を省きました。
ここで、'S.O.E. Upper-Basic Drill' の1ユニット、「名詞節を導く接続詞」の冒頭のポイント部分をお示しします。
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★ 'SOE' - Upper-Basic Drill UNIT 29 接続詞B より
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このレベルにおいて、「他動詞+that + 主語・動詞」で「〜ということを・・する」云々、という類の説明はかなり抽象度が高く、学習者は理解どころか、素通りしてしまうこともしばしばです。ここでは、節を導くthatに先行する典型的な動詞を7つに絞り、その意味とともに提示しました。また、それらの動詞をすべてthatに付加する形で枠内に収め、さらには各動詞と各意味の頭を揃えて、視覚的・感覚的に注意をひくレイアウトに仕上げております。
3. 全問題英文の和訳先行配置
一般に日本の英語教育において、訳を英文より先に読ませるのは一種の「ご法度」か、あるいは「甘やかし」とされてきました。もちろんこれは解釈を主目的にするレベルの高い授業(教材)の場合に限ってのことであり、すべてのレベルにあてはまるものではありません。何より1000語以下レベルの単語すら習得していない学習者に、意味解釈を前提として発問すること自体、矛盾していると言えます[*2]。
'S.O.E. Basic Drill' では、全問題にわたり訳を問題英文に先行して配置しました。訳を先に与えることで、意味解釈にかかる学習者の負担は大幅に減じられます。そして、その
「和訳先読み」で浮いた余力を、問題英文の「再筆記演習」に振り向けました。
* ( 高知県高校授業研究プロジェクトチームが、「和訳先渡し授業」による成果を、『高校英語教育を変える和訳先渡し授業の試み』[三省堂]で紹介しております )
4. 「再筆記演習」による徹底した筆記訓練
「再筆記演習」とは、問題を解いた後、解答部分を含めた問題英文を、再度下線部に筆記させる、というもので、他書に例を見ない、本シリーズ最大の特徴とも言える活動です。日頃より書く習慣が不足しがちな学習者に、まとまった筆記訓練を課すことを目的にしています。
また、間断なく手を動かし続けることで、1つの活動に集中して取り組むことの醍醐味を体験させます。
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★ 'SOE' - Basic Drill UNIT 30 より
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この書込演習を含む、本書の筆記語数は、'S.O.E. Basic Drill'で約8200語に及びます。 手元にある同形態、同数ページ(p64)の教材では、約1400語、また高校用教科書 (コミT・基礎レベル )でさえ、収録語数は1200語程度です。これは、記号問題や選択問題が多かったり、易しさ強調するするために大きなイラスト等を掲載しているからにほかなりません[*3]。その一方で「書く力が落ちている」とよく言われますが、そもそも書く機会はこの程度しかないのですから、至極当然の成り行きのように思われます。これでは、年数が経てば経つほど、上位層の生徒と学力差がつくのは明らかでしょう。ご採択校の先生方は次のような感想をお持ちです。
「前半は1ページにつき15分ほどかけていた生徒も、後半になるとかなり慣れて10分以下で仕上げるようになる。筆記スピードは確実に増しているようだ。」
( 通信高校 Basic 1年時 )
「似たような表現や同じ単語を何度も書くことになるので自然に復習ができる。意外に生徒はこの作業を嫌がっていない。パタンに従えばよいだけなので、特別な指示が必要なく、教室は概して静かだ。」
( 工業高校 Basic 2年時 ・ Upper Basic 3年時 )
ややもすると、学習者の多くは筆記など根気の要る作業を嫌う、と考えられがちですが、一度書き方(解き方)の要領がわかると、それまでとはうってかわって意外な持続力と粘りを発揮することがあります。下の表は、本ドリルの消化率の高さを示したものです。
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★Basic、Upper-Basicは高校1年生を、Elementaryは 高校2年生を対象にスタッフがモニター調査をしました。
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与えられた問題を自分の力量で解決することは、持てる力の絶対量に関係なく、誰にとっても心地よいものであり、またそれら行為を通じて、私たちの意欲や動機はさらに高くなるのではないでしょうか。私たちは指導に行き詰まると、ややもすると「(生徒に)そもそもやる気がないから・・」と考えがちです。しかし、一見して学習意欲や動機に欠けると思える生徒も、彼らのレベルに合うソフトを提供すれば、成績上位の生徒と同様、高い集中力を発揮するものです。
'SOE' シリーズは、学習者としての根源的欲求が日頃の活動にて満たされない生徒に、自ら解を導く醍醐味を体験させ、以後の学習活動に自信を与えることを最大の目的にしています。
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*1
これは執筆陣の意図によるものものだけではありません。参考書を作製する場合、多くは編集者(出版社)が章構成やページ数を先に決定します。よって、執筆陣は本の体裁を保つためにやや無理をしてでも「解説」「説明」を付加しなければならない時があります。基礎レベルのものは、これがかえって学習者を混乱させることになります。
現場には携わらないものの、刻苦勉励を続けてきた執筆者は、ご自身の成功(失敗?)体験から「わかりやすく丁寧に解説すればどんな学習者も英語は理解できる」という「教育性善説」にとらわれているため、この問題は永久に解決されない感があります。SOEは現場に立つもののみが執筆、編集するため、このようなミスマッチは起こりません。
*2
[1*]と重複しますが、教育関連図書の執筆陣は、大学教員や厳しい現場経験のない進学校教員であることが多いようです。かつて私が大判教科書の編纂業務で彼らと共同作業をしていた時のことです。私が「これを手にする生徒の中にはpeopleやsheの意味さえ知らない者もいる」と発言した時、「それは中学の教科書に何度も出てくるので問題ない」と言われて唖然としたことがあります。
*3
学習者は想像している以上に敏感です。実際、高校用というのに、写真や絵が多く、語数の少ない大判の教科書を手にとって、中三時の教科書よりレベルが落ちたと感じます。中には「しょせん落ちこぼれが使う教科書」と反応する者もいます。
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